庚申せさせたまふとて、内の大臣殿、いみじう心まうけせさせたまへり(清少納言『枕草子』/五月の御精進のほど)
おはようございます。山田です。今朝の道の駅豊北は、雲多めですが晴れています。今日のイベントは11時~さざえつかみ取り、13時半~ほっくん登場!
お正月や小正月にあわせて、神社の鳥居や、道端のお地蔵様や庚申塚(こうしんづか)の飾りが新しくなっています。今の時期の風景は、新鮮な気持ちになりますね。
豊北町では、こういった藁(わら)細工の飾りで祭られた庚申塚が、あちこちで見られます。庚申(こうしん/かのえさる)とは、十干(じっかん)十二支(じゅうにし)のひとつで、暦に当てはめて使われました。
例えば、2023年は癸卯(きう/みずのとう)で、うさぎ(卯)年。「壬申の乱」は壬申(じんしん/みずのえさる)の年、「戊辰戦争」は戊辰(ぼしん/つちのえたつ)の年。今日1月29日は丁亥(ていがい/ひのとい)。庚申の日は、年に6回あります。
古く日本では、中国の道教に基づき、庚申の夜に眠ると、体内にいる三尸(さんし)という虫が抜け出して天に上り、人間の罪を天帝に告げ口して早死にさせ(て後は好き勝手し)たがるので、長生きするため眠らず集まって何かをして過ごす、という習慣がありました。
はじめは貴族の行事でしたが、江戸時代には庶民にも広がりました。道の神や田の神や仏教とも入り交じり、人々は安寧や長寿を祈って庚申塚を建て、藁細工で飾りました。豊北町では現在も、その習慣が残っていて、立派な飾りが作られています。
庚申(かうしん/こうしん)せさせたまふとて、内(うち)の大臣殿(おほいとの/おおいとの)、いみじう心まうけせさせたまへり(清少納言『枕草子』/五月の御精進(みさうじ/みそうじ)のほど)
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庚申をなさるということになり、内大臣(藤原伊周)殿が、たいそうお心遣いなされたことがありました。
平安時代の随筆『枕草子』には、庚申の夜を過ごすこととなり、内大臣・藤原伊周(ふじわらこれちか)が手配して、人々が夜通し和歌を詠み冗談を言い合って楽しむ様子が描かれています。藤原伊周は、筆者の清少納言が仕えた一条天皇皇后・藤原定子の兄。
2022年の調査報告(矢都村典子「神宿る石-豊北町域の庚申塚を探る-」『土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム研究紀要』第17号)によると、豊北町には庚申塚が95地点98基あったとか。庚申塚の飾りはお正月前後にかけ替えられることが多く、今の時期は新しく綺麗で見ごたえがあります。
豊北町の庚申塚の飾りは、注連縄に申緒(さるお)という、馬具をかたどった縄飾りを組み合わせたものが多いです。申緒とは、田畑を耕す犂(すき)に牛や馬を繋ぐための藁緒。そのため豊北町では、この飾りを作ることを「申緒打ち」と言います。
場所によっては、御幣(ごへい)や榊(さかき)をお供えしたものや、申緒の他に凝った飾りを加えたものも。知らなければ気づかない、でもその気で見るとすごいものがたくさんある、道端のひそやかな芸術…!
道の駅豊北がある豊北町の隣町・豊浦町川棚温泉の川棚温泉交流センター・烏山民俗資料館コルトーホールでは、豊浦町涌田の有名な藁細工名人・諏訪音松さんと、北九州市在住の柳井佳さんの藁細工展を開催中。今日(1/29)16時までですが、すごく芸術的な藁細工が見られるので、お急ぎください!
藁細工展
・2023年1月29日(日)まで
・9:00~16:00(最終日)
・烏山民俗資料館
・観覧無料
藁細工ではありませんが、藁を編む手技で作られた布草履が、道の駅豊北の手芸コーナーにあります。彩りあざやかで目に楽しいですよ☆