伊勢乃白水郎之 朝魚夕菜尓 潜云 鰒貝之 獨念荷指天(『万葉集』第11巻 2798番)
おはようございます。山田です。今朝の道の駅豊北は雨ですが、元気に営業しています。
道の駅豊北では、昨日に引き続き本日(2/19)も「さわら祭り」絶賛開催中。お肉好きには11時より、出荷者協議会さんによる、しし鍋の振舞いがあります。先着100名様限定、お早めに!
海の幸の魚介類、山の幸のシカやイノシシは、豊北町では昔から食べられていました。そう、今から約2000年前、土井ヶ浜遺跡の弥生人も。
土井ヶ浜は、道の駅豊北から南に車で10分程度。海水浴場で知られますが、弥生時代の集団墓地遺跡「土井ヶ浜遺跡」があります。
現在は「土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム」として整備され、昭和28(1953)年からの本格的な発掘調査は19回、出土人骨は300体以上。今年は3/12まで、70周年記念企画展「土井ヶ浜遺跡の軌跡」を開催しています。
土井ヶ浜弥生人の特徴は、高い身長(男性163cm、女性150cm)、面長で扁平な顔、抜歯といろいろありますが、太い上腕も特徴。漁労採集のため、舟を漕いでいたからですね。
最近の研究では、骨の成分を分析すると、生前の食生活がわかります。土井ヶ浜弥生人は雑穀類をあまり食べず、陸の幸(植物や鳥獣)と海の幸(海産物)の両方を、同程度食べていたそう。
伊勢乃白水郎之 朝魚夕菜尓 潜云 鰒貝之 獨念荷指天(詠み人知らず/『万葉集』第11巻 2798番)
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伊勢(いせ)の海人(あま)の朝な夕なに潜(かづ)くてふ鰒(あはび)の貝の片思(かたもい)にして
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いせのあまの あさなゆふなに かづく(かずく)てふ(といふ/ちょう) あはび(あわび)のかひ(かい)の かたもひ(かたおもい)にして
今回の冒頭は『万葉集』2798番から。「伊勢国(三重県)の海人(漁師)が朝夕に潜って採ってくるアワビの貝殻のような私の片思いなのよね」という、アワビ貝の形をテーマにした、切ない恋歌です。
ハマグリなどの二枚貝は、貝殻二枚の殻がぴたりと重なり、対の殻以外は合わないため、夫婦和合のシンボルでした。アワビは、サザエなどと同じ巻貝ですが、形は二枚貝の片方に見えるため、和合の相手がない片思いの象徴に( ノД`)…
今から約800年前の平安時代末期、「今様(いまよう)」という流行歌を集めた『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』には、アワビ貝を片思いの象徴にした今様(流行歌)があります。「磯のアワビの片思い」は、千年以上の伝統がある言葉なんですね。
伊勢の海に朝(あさな)夕(ゆふな/ゆうな)に海人の居て採り上ぐなる鰒(あわび)の貝の片思なる(『梁塵秘抄』462)
我は思ひ人は退(の)け引く是(これ)や此(これ)波高や荒磯の鰒(あわび)の貝の片思なる(『梁塵秘抄』463)
サワラやアワビやサザエと言った地元の食材を食べる時に、はるか昔の我々の祖先も食べたり、思いを込めていたことを知ってもらえると嬉しいです(^o^)/
土井ヶ浜遺跡発掘調査開始70周年記念・土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム開館30周年記念企画展『土井ヶ浜遺跡の軌跡』
- 日時:2022年12月6日(火)~2023年3月12日(日)9:00~17:00
- 会場:土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム(山口県下関市豊北町神田上891-8)
- 観覧料:一般200円、大学生等100円、高校生以下無料、65歳以上の下関市民・北九州市民100円
- 休館:月曜(祝日の場合は翌平日)
- 主催:土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム、下関市
- 問合せ:人類学ミュージアム:083-788-1841
また、土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアムでは、昨年(2022年)10月より、奈良県から長崎県までの弥生時代関連十九遺跡二十施設連携企画「弥生の御朱印巡り」に参加しています。さっそく御朱印と、御朱印用のオリジナル野帳(測量野帳)を入手!
土井ヶ浜遺跡は、下関市豊北町の土井ヶ浜に、弥生時代前期の終り頃を中心として営まれた集団墓地遺跡。貝殻のカルシウムを多く含んだ砂地のため、埋葬された骨がよく残っており、当時の埋葬習俗や墓制を知る上で、貴重です。特に、完全人骨が多数発見され、弥生人についていろんなことがわかりました。御朱印で興味をもって、訪れる方が増えると良いですね。