深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染に咲け(上野岑雄/『古今和歌集』832)
こんにちは。山田です。今朝の道の駅ほうほく、快晴ですが、平日だからか静かに始まりました。
道の駅ほうほくのすぐそば、和久漁港の向こう側に御神輿が来てると教えてもらったので、展望テラスに出てみましたが、ちょっと遠くてよく見えません…春祭りでしょうか。
春祭りは、これから一年の活動が本格化する時期に、地域の安寧や繁栄を願うもので、多くの神社で盛大に行われます。豊北町域では、七年ごとの浜出祭(浜殿祭)も、春に行われるお祭り。次回の浜出祭は、2025年の予定です。
道の駅からほど近い、神田一宮住吉神社(新下関駅近くの長門一宮住吉神社とは別)の参道は、ちょうど花盛り。お宮と学校は、桜が多いです。個人的にイチオシの寺畑の一本桜は、今年も綺麗な花を咲かせています。
桜の時期ということで、道の駅ほうほくのパン工房ラ・メールさんでは、今月のおすすめパンに「桜あんぱん」が登場。桜を練り込んだ餡に、桜色で桜の形、全体に桜の風味が漂う、ちょっと上品な気分のパンです。ぜひどうぞ☆
伊豆大島を含む伊豆七島、伊豆半島、三浦半島及び房総半島を原産とするオオシマザクラは、日本に自生する野生のサクラの一種。オオシマザクラの葉は塩漬けにすると色合いと風味が良く、6月頃に採取した葉が、翌年の桜餅によく使われるそうです。
深草(ふかくさ)の 野辺(のべ)の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染(すみぞめ)に咲け(上野岑雄/『古今和歌集』832)
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深草の野辺に咲く桜よ、人と同じく心があるならば、あの人を失った今年は、喪の色である墨染め色に咲いてくれ。
今回の冒頭は、『古今和歌集』から。平安時代前期、堀河太政大臣こと藤原基経(ふじわらのもとつね)が亡くなった野辺送りで、上野岑雄(かみつけのみねお)が詠んだ挽歌(ばんか)です。挽歌とは、もともとは葬儀の棺を挽く時に歌ったとされる、故人を悼んで詠む歌のこと。
『源氏物語』第十九帖「薄雲」で、初恋の藤壺女院を亡くした主人公・光源氏が思わず口ずさむ場面でも有名な和歌です。春に咲く桜の淡くも華やかな薄紅色の世界を、心象により色彩を失った薄い灰色に塗り替えることで、深い喪失感を表しています。
桜の下でのお花見や、葬儀の黒灰色のしつらえなどの日本文化に親しんだ人なら、なんとなくイメージできるのでは。儚く散る桜に重ねる思いは、千年の時を超えても変わらないのですね。